清々しい朝、そしてここはいつもの呉城ではなく、蜀の城。

呉よりかは狭いが、まだまだ見てないところも沢山あるのだ。

厩に倉庫に書庫。


きっとまだ、沢山部屋があるはず。








「ふふふふふ…我ながら、見事な作戦ー!」








そこで、周瑜が妻、小喬は立ち上がった。

城内探索もちょっとは呉に役立つかもしれない。



蜀にきてから探検し終えた城内を簡単にまとめた紙を取り出すと、
周瑜が使っていた筆と小さな瓢箪に入った墨を片手に客室から飛び出した。








「こっそりお城探索、開始!」
















































「いだだだだだだだっ!」

「馬超殿、もう少しの辛抱ですぞ!」

「そ、そう言われてもだ…うおああああ!!!!」





小喬が飛び出した頃と同時刻、医務室では馬超が包帯を取り替えてもらっていた。
その傍にはと馬岱が林檎をむしゃむしゃと食べている。






「馬岱さんがいつも林檎剥くんですか?」

「ええ…女人の方に比べると下手なんですが…」

「いえ!上手ですよ!孟起さんもちょっとは見習えばいいのに」

「う、うるさい!」

「徒兄上は不器用なので、危ないかもしれないですし」

「岱!俺はそこまで不器用じゃな…っ!!!!?」

「そうですよね、危ないですよねー」






痛みと戦う馬超を無視して、馬岱とはどんどん林檎を食べていく。
一応馬超の分は残してあるあたり、わざと無視をしているようだ。

にこにこと林檎を仲睦まじく食べる二人を横目に、馬超は更なる一撃をくらい、しばらく悶絶するはめになった。













「ふぅーん…ここが医務室なんだぁ…」












また馬超が悶絶している時、こっそり任務中の小喬は医務室の前にいた。
呉と比べて、やはり小さいが、ゆったりとできそうな雰囲気。

中はどうなってるんだろ?とちょっとだけ格子の間から中を見ると、丁度目の前にと馬岱の姿が見えた。
二人は楽しそうに林檎を食べながらお話ししている。








「(あれ?まさか、この二人って……?!)」







え、じゃぁ陸遜様は失恋なの?!
っと更にグイッと格子を覗き込む小喬。

実はその小喬に気付いていた馬岱は、そのまま無視して食べ続けているふりをした。
ちなみには死角だったので、全く小喬の存在に気付いていない。








「(何が目的かわからないが…きっと城内偵察の類か…)」







察しのいい馬岱に見事ばれている小喬だが、それすらも気付かず、ずっとと馬岱が気になって格子から覗いている。
別に覗かれてもいいが、あまりいい気はしない。

流石の馬岱も知らないふりをするのに疲れてきた。



いっそのこと、この密偵で遊んでやろうか?









殿…しばらく失礼。」

「へ?」







馬岱は椅子から立ち上がり、の顔の近くまで自分の顔を近づけた。

それはもう、まさにあと5センチと言ったところ。

そしてそれは、小喬から見ればまるで口付けをしているような形でもあった。




だから。







「(うっひゃーーーーーーーーーーーー!!!!!!見ちゃった見ちゃった見ちゃったぁ!!!!!!!!!)」






小喬は馬岱の策略にはまり、格子から顔を離して、そのまま廊下を走っていってしまった。
思い通りに勘違いし、そして覗きもやめたのだから、こちらとしては大満足である。

しかし、状況をよく理解できていないは、プルプルと震えて、馬岱との5センチの距離を保っていた。







「(どうやらどこかに行ったようですね)」




「岱」




「あ…」







こっちも見事に勘違いをしたのは、馬岱のちょっとした誤算であった。












































「どうしよー…すっごいものみちゃったよぉ…」







小喬はというと、馬岱の仕掛けた罠にひっかかったまま、うきうき気分で廊下を歩いていた。
こういった場面に出くわすから探検は楽しいのだ。

ただ、今見てしまったことを周瑜に言うべきなのだろうか?





「周瑜様だったら、別に興味なさそうだし…」





陸遜に言ったら言ったで、ちょっと陸遜が可哀相だ。

ならば、尚香か。
姉である大喬もきっといい反応をしてくれるはず。










「そうと決まれば、早く二人に聞かせなくっちゃねっ!!」









それが誤報になるとも知らず、小喬は二人がいるであろう元の客室へと向かった。



































「今日の馬岱さんといい、孟起さんといい…なんかおかしいんですよね…うーん…」

「そうなのですか?」

「馬岱さんはすごい至近距離に来るし、孟起さんは何故か怒るし…」

「(殿、それはきっとあなたが関係してるんでは…)そ、そうですか…」






所変わって、医務室から出てきたと、そこに丁度出くわした姜維が昼食を食べに食堂へ向かっていた。

あれから、馬超に医務室から強制的にだされたのだが、馬岱は大丈夫なのだろうか。
馬岱はなにも悪いことはしてないはずだが…。





「孟起さんの林檎、一個だけ食べたからかな…?」





多分きっとそうだ。

とんでもない珍解明だなと思いつつも、姜維はただ黙っての横を歩く。

変なところで勘がいいのに、こういうことになると鈍い
こんなことで、自分の恋心には気付いてもらえるのだろうか。

そこのところ、正直不安である。







しばらく歩いた先、何かキラリと光っている物が見えた。

あれは…なにか陶器の破片か。

しかし、これに気付いたのは姜維だけでは気付いていなかった。
このまま歩いていけば踏むのは





「目の前の床、危ないですよ?」と声を掛けようとしたとき、なんともいえないタイミングでが躓いた。
ただ、ただ歩いてるだけなのに、躓いた。







「あっ、殿!!!!!」

「うわっ!」

































「きっと二人ともおどろくぞぉ〜v」





二人の驚く顔が早く見てみたいなぁ。
昨日湯浴みで持ち上がっていた話題に関する大事件だ。

きっと食いついてくるはず。


小喬はすたたんすたたん、と廊下をスキップして、止まった。






もう一度通った場所にゆっくり後戻りした。























「え、ちょ、ちょっとぉ…あれって…」



















長く続く廊下の先で、床に転がる男女二人。
よく見れば先ほど馬岱と口付けをしていたではないか。

そしてを押し倒しているのは、麒麟児姜維。












「(こ、こ、こ、これって三角関係ーーー?!)」









ささっと二人の死角になる柱に隠れて、そのまま倒れている二人を覗く。

ああ、これからどうなるんだろう。

小喬の興味心がこの二人から目を離すなと命令している。











「(どうなるの…どうなっちゃうの?!)」













どきどきどき…。































「小喬!!!!!!!!!」





「ぎゃああああああああああああああぁっ!!!!!?」




















背後から怒鳴られた小喬は、可愛げのない悲鳴をあげて後ろを振り向いた。

そこには、怒って眉間に皺をよせている大喬。

何も言わずに客間をでてしまったから怒っているのだろう。

こうなってしまった大喬は、何を言ったって通じない鬼になる。







「お、お姉ちゃん…!!」

「黙って部屋からでて…もし何かあったらどうするの!!」

「だ、だって…」

「だってもなにも…って、小喬ったらこの筆と紙で何をするつもりだったの?」

「あ、それはね、城内探検の地図で、それを完成させようと思って…」

「小喬、ダメよ、こんなことしちゃ…。せっかく尚香と劉備様のご結婚で仲良くしているのだから…」

「でも…」







ちらり、とたちがいたところを振り返ってみたが、もうそこには二人はいなかった。
多分さっき自分があげた悲鳴に気付いて逃げてしまったのだろう。

つまんないの、と思っていた矢先、大喬の力強い手が小喬の腕を掴んだ。






「さぁ!帰るわよ、小喬!周瑜様も怒ってらっしゃるんですからね!」

「ええぇ?!そ、そんなぁ〜!!!」

「だだをこねない!きっちり説教します!」












小喬はズルズルと大喬に引きずられて、客間に逆戻りした。

























ちなみに、床に転がっていた二人はというと、そこをたまたま通りかかった馬超に見つかっていた。

もちろん馬超はその如何わしい状況にまた怒り出す仕舞い。



暫く廊下で平伏し、何故そうなったかを必死に説明する姜維と、何故馬超が怒っているのか分からずじまいのが、

延々と続く馬超の説教に耳を傾けていたのだった。
















アトガキ


第3章、入りましたね。
もうじき呉の皆さんが帰ってゆきます。
ので!ここは小喬に登場してもらったんですが笑
読みにくいですね爆
なんとなく色々と勘違いをしてるんだな、とわかっていただけたら嬉しいです汗
はやくあの3人を出したいのに…。

2008.3.25(Tue)