「貴女のためにどれだけの人々が動いたか、お分かりですか?」

「は、…はい」












夕食の席。

大広間の中はそれはもうふぶいて。
春なのに真冬のような寒さ。










「私達はもちろん、呉の方々も捜索してくださいました……貴女のために」

「もう、本当に、すみません」







ここで泣けたらどんなに楽か。
必死に呉の皆に頭を下げて謝る。
陸遜や尚香あたりは「そんなに謝らなくてもいい」と慰めてくれたが、そうにもいかなくて。

周瑜や孫権は「軽率だ」と言わんばかりにを睨んでいたのだから。














「それで、何故…あんな軽率な行動をとったのです?昼に襲撃をうけたばかりでしょう?」

「それは…」











発見直後、馬超に怒られ、馬岱に怒られ、諸葛亮に怒られ、劉備に怒られ。
仕舞いにはこの状態。

ああ、なんで外に出たんだっけ…?
情けないことに、自分でも分からないのだ。
馬超にここにいろと言われ、それからの記憶が無い。

確か鏡を見た後、からか…。




一体その後、何をした?













『お前は馬岱に厠に行くといって、何故厩に行った?』






そう馬超が言っていた。

もちろん自分が何故ここにいるのかも分からないままだったので、





『わ、わからない』





としか答えなかった。

しかも藁の中で寝てたとか…何がしたかったのだろう?
そもそも厠なんて行きたいとも言ってないと、思う。

馬岱にだって会った記憶がない。








この矛盾した記憶をどう言い表したらいいのか分からない。




















「私…」



「まぁ、そんな怒らなくてもいいじゃねぇか。」








え?と驚いて顔をあげる。
見れば孫策が席から立ち上がってこちらに向かって来ているのが見えた。









「お前が馬鹿じゃないってことくらいわかる。だってそうだろ?諸葛亮。が無闇に敵地を歩き回るような奴じゃないってな。」

「…確かに、そうですね」

「お前にも色々とあったんだろうし、無理して言うこたぁねぇ。」

「孫策さん、でも…」

「おい、権!周瑜!そんな怖い顔すんじゃねぇ!」








そう言われた孫権と周瑜はお互い顔を見合わせて溜息をつき、なんとか苦笑してこちらを見た。
私が悪いのに…、と複雑な思いをかかえたまま、隣でワシワシと頭を撫でる孫策を見上げる。

兄貴分な人だ。

ちゃんと謝って、理由も話すべきだと思う。
だけど今は、その孫策の心遣いがとてもありがたかった。


理由を言う前にあの時の記憶を辿らなければ、確かな理由を言うことはできない。







この後の食事の席では、孫策のおかげで誰からも問いだされることはなかった。




















































「…はぁ」





「溜息つくと幸せが逃げるって言うわよ?」

「あ、尚香…」







食事が終わり、暫く頭を冷やそうと大広間の前の廊下で夜風に当っていた。
尚香もの姿を見てここに来たらしい。

今日は災難だったわね、と明るく言う尚香はが座っている場所の隣に腰を降ろした。







「災難もなにも…なんか自分で招いた災難のような…はぁ…」

「まぁ…しょうがないわ。それにさっき策兄様が言ってたように、何かあっての行動なんだから。」

「そう、だよね」

「もしよかったら悩み、聞くわよ?」

「え!!いいよ!!大丈夫、これは…」







自分でなんとかしなくちゃいけないことだと思うし…。
記憶が無いだなんて言ったら、大変なことになりそうだし…。

「もう大体は解決したから大丈夫!」とだけ言った。







「ふーん…ならいいけど…あんまり無理しちゃダメよ?」

「あはは、わかったよ」







なんだか姉みたいだな。
そういえばさっき、孫策が助け舟を出してくれたとき、どこか兄のような感じがした。
と言っても、自分は長女だから姉や兄の感覚がイマイチ分からないのだが。
きっともし姉や兄がいたらこんな感じなんだろう。

呉の人ってどこかノリが若いよなぁ…と思いながら、じっと尚香を見つめていると、いきなり尚香が立ちあがった。






「どうしたの?」

「いいこと思いついた!!」

「え?!何?!」

「湯浴み一緒しましょうよ!」

「うん!」























「って、えぇ?!」


















驚いて振り返ると意地悪そうな笑みを浮かべた尚香がの両肩をガシッと掴んだ。







「嫌なことがあったらはしゃいで忘れるのよ!!もちろん、星彩って子も一緒にどうかしら?!」

「そ、そうだね、星彩も連れてくるよ!」

「となれば決まりね!!じゃ、準備が出来次第浴場に集合!」

「は、はい!!!」








遅刻厳禁だからね、と言い残し、尚香は走り去って行った。
こりゃ…大変だ。

こう、他の国の人と入るのは初めてだ。








「こ、こうしちゃいられない!星彩に言わなくちゃ!」

















星彩はOKしてくれるかな?とやや不安に駆られながら星彩の部屋を目指すの後ろ。
















「馬超殿、盗み聞きですか?」

「しょ、諸葛亮殿!!!?」







護衛兼盗み聞きしていた馬超と、さりげなく盗み聞きしていた諸葛亮がいた、らしい。
















アトガキ


ぐはは、思い切って書いたら、またまた意味が…orz
ヒロインさん、どうやら記憶がないようですが…どうしちゃったのでしょうね。(ぇ
孫策の出番が少なすぎるということで、何気に孫策を表にだしてみたりw
孫呉には色々と動いてもらわねば…w(オリジナル夢になりそうだわ汗

さてさて、もうすぐあの3人が帰ってきますよ。
次回はちょっとギャグに走りたいなぁ、と思っておりますぜ^^v

2007.9.6(Thu)