「これ…似合います?」
「…やや刺激的ですね…」
はやっぱりですよね…と鏡の前で苦笑した。
あの後二人はの部屋に行き贈り物を置きに行った。
そして中身を気にしていた李に「これを貰いました」中を見せると、早速呉の服を着てみようと言うことになった。
そして着てみたものの…。
呉の服は胸元がバックリと開いており、両方の横腹のところがシースルーになっていた。
まるで尚香の服のようだ。
下の方もかなり刺激的である。
趙雲は爽やかに微笑んではいるが、時々鼻を啜らなければならなかった。
「今夜の祝いの宴にはこれで出られたらいいですよ。きっと呉の方も喜ぶでしょう」
「そっか…ならちょっと寒いから何か羽織るもの持って行こ…」
「こちらをどうぞ」
李はの着ている服に合う羽織りを持ってきて、の肩にかけた。
これなら少しは暖かいだろうが…やはり胸元と足元が寒い。
しょうがないか…と羽織りをちゃんと羽織ると、李に「ありがとう」と言った。
そして鼻を少し啜る趙雲のところへ、とととっと駆け寄った。
「趙雲さん、もう宴始まっちゃいますか?」
「あと少ししたら始まるかと…」
「ならもう広間に行かなきゃ…李さん、行ってきます!」
「汚さないように食べるんですよ?」
「は、はい!」
この服にシミでもつけたら孫権や陸遜に嫌な顔されそうだ。
死んでもこの服は汚さないぞとは床で裾が擦れないように両手で持って歩いた。
広間に着くともう中に諸葛亮や劉備達が席に座っていた。
呉の人たちはまだ来ていないらしい。
と趙雲が広間に入ると星彩が気付いて近寄ってきた。
「、その服は呉から?」
「うん…ちょっと寒いけどね…」
「きっと姜維殿なら鼻血を噴きますね、趙雲殿」
「多分もう噴いているさ。…ほら」
趙雲が指差した先にいた姜維は沢山の女官から布を鼻にあてられていた。
その布は白からすぐに赤く染まり、女官も忙しそうに布を取り替えては姜維の鼻にあてがった。
「姜維は刺激的なものには敏感なんですよ」
「そこまで刺激的じゃないとは思うんですけど…気をつけなくちゃ…」
「…(十分刺激的よ貴女)」
星彩のツッコミも虚しく、は羽織りで胸元を完全に隠そうとしたが羽織りがやや短めだったので少し無理だった。
胸が意外にでかいため羽織りの長さがあと少しだけ欲しいところ。
趙雲が悪戦苦闘しているを見て、不意に赤い液体が出そうになり鼻を啜っていると星彩が怪訝な顔をして「まだまだ青いですね」と言った。
…言い返す言葉はない。
その後、劉備や関羽達もやってきてはの服を見て鼻血をややたらしていた。
皆の鼻血が服に付かないようにと星彩が自分の後ろにいるよう言った。
1番噴いたのはやはり姜維だった。
に近づく前に目が合っただけで吹き出してしまうのだから。
色んな人が来る中、ただ一人だけ姿が見えなかった。
きっと「似合わない」だとか「餓鬼にはもったいない服だ」とか言ってくるはずの人物。
視線だけで広間の中を隅々探してもあの派手な兜は見えず、はどうしたんだろうと心配した。
何かあったのだろうかと探しに行こうかしたが呉のメンバーが広間にぞろぞろと入ってきたのでそれはできなくなった。
がどの席に座ろうかと探していると星彩が手招きしているのを見つけて、ありがとうと言って座った。
この席には後三人座れる。
まだ来てない馬超さんや馬岱さんが座れるように席をとっておこう、と思っていたがその席に誰かがドンと座った。
「ちょっと座らせてもらうね、お姫さん」
「あ…はい…」
右目の目尻の下に泣き黒子がある男の人。
馬超が教えてくれた凌統という人だ。
「すみません…私達も座っていいですか?」
「ど、どうぞ…」
凌統の後に陸遜が、その後から甘寧がやってきて空いている席に座った。
隣に座っている星彩は呉の人が増えるごとに不機嫌になっていった。
は「孟起さん達が座れないな」と心配したが、馬岱だけはいつの間にか広間に来ていて趙雲の横に座っていた。
「ねぇ。」
「あ、はい?」
「その服、どう?」
「とても素敵な服ですね!…ただすーすーします…」
「だろうな!!俺もその服見に行った時寒そうだなって思ったぜ!!」
いきなり横から飛び出すように話し出した上半身裸男、甘寧。
凌統はそんな甘寧にタレ目を細めて「アンタは黙ってりゃいいんだよ」と言って甘寧の額をバシンと叩いた。
その扱いにヤンキーのようにキレだす甘寧には「喧嘩はダメですよ!」と甘寧の服の裾を引っ張って座らせようとしたが、
凌統が「お姫さん、そんな奴の服なんて触るもんじゃない」と更に火に油を注ぎ。
「お前やんのかコラ?!」
「上等上等……ここで沈めてやるっての」
段々言い争いが酷くなり机を挟んで二人が胸倉をつかみ合う。
すると広間からはもっとやれ!などの声援が(それは主に黄忠や張飛)。
一部の女官達が止めに入ろうとしたが二人の威圧に押され引っ込むしかなかった。
2人の間に座っていた陸遜も止めようとしていたが、2人には相手にもされず、
そんな中へ孫策が「俺も混ぜてくれ」と言って入ろうとしていたが孫権に止められていた。
劉備と尚香がまだ広間に来てないからいいものの…早く止めさせなくては。
はまだ必死で甘寧の服を引っ張っていた。
が、ふと隣にいた星彩が立ち上がる。
そしてその手には……水。
まさか。
「せ、星さ…!!!」
バシャッ!
「…」
「…」
「祝いの宴で喧嘩は止しましょう。」
水をかけられて呆然としている2人を放って、星彩は静かに椅子に座ると女官に「水を」と言って、
杯に水を入れてもらっていた。
喧嘩していた2人は呆然としていたが、大人しく座りその後は星彩の顔色を目を泳がせてはチラチラと伺っていた。
ちなみに喧嘩をしてないも星彩の顔色を伺っていた。
「どうしたの?」
「いや、星彩ってすごいなって…」
「いつものことよ」
「(いつもなの?!)」
一体誰と誰の喧嘩を止めてるのか気になったが、少し怖くて聞けなかった。
劉備さんと尚香が来るまでまだ時間があるようだったので、は俯いていようかな…と下を向こうとしたが、その瞬間に陸遜とパチリと目が合う。
するとにこりと微笑んでに口を開いた。
「殿、すごく似合ってますね。」
「そうですか?…きっと尚香が着たら似合いそうですよね」
「姫は…このような服を着ると一日で汚して帰りますからね…」
「うちの姫さんは御転婆なんだ。ここのお姫さんとは大違い!」
「そ、そうなんですか…(尚香ってどこかスポーツしてる人みたいだし…)」
凌統が「毎日虎と遊んじゃ泥んこだからね、あの人」と言っていたが…呉では虎がペットなのだろうか?
虎と戯れる尚香を想像していると甘寧が「虎に乗ってたりするからな…ある意味危険な姫だぜ?」と言っていたので、
虎に乗っている尚香を想像してみた。
…似合う。
大きい虎に乗って颯爽と草原を駆け抜ける尚香の姿がの脳裏を走り抜けていった。
「そういえば俺らの紹介まだだっけね。」
「…あ、はい(もう知っているけどね)」
「俺は甘興覇だ!甘寧って呼んでくれ!」
「か、甘寧さんですね……(上半身が近いよ〜)」
よく見ればたくましい体にヤクザのような刺青が施してある。
が刺青に見とれていると「彫ってやろうか?」と言われ思いっきり顔を横に振って「痛そうなので遠慮します」と断った。
そんなを見てクククと笑い出す凌統。
「意外と面白いんだな、お姫さんは」とにっこり笑われると、妙に恥ずかしかった。
きっと日本にもこんなホストがいるような気がする。
「おっと、俺は凌公積ね。凌統でも公積とでも呼んでくれたらいいさ」
「凌統さんって呼びますね」
ホストの凌統…っと呼んでみたいがきっと怪訝な顔をされるに違いない。
は苦笑して杯から渇いた喉に水を通した。
ふと広間の入り口を見てみるが…馬超が来る気配はない。
具合でも悪くなったのだろうか?
あの不真面目な馬超でも君主のめでたい宴をサボることはないだろう。
「後で部屋に行ってみようかな」と、は静かに劉備たちが来るのを待った。
一方馬超は広間の中には入らず外に居た。
ただ入ればいいだけなのに中々足が入らず、その場に立ち尽くしたまま中から聞こえる声に耳を傾けていた。
楽しそうながやがやとした声が聞こえる。
途中劉備の声がして会場が静まったが、またすぐに賑やかな声がしてがやがやと騒がしくなった。
きっと宴を始める音頭でも取ったのだろう。
馬超は広間の近くにある窓際に座ると沢山光っている星を見上げた。
もう今更になって中へ入ろうとは思わない。
逆に今入った方が無礼だろう。
それに今はの顔を見たくない。
少しの間だけ広間入り口の警備でもするか、と溜息をつくと急に入り口が開いた。
か?少し期待したが、出てきたのは全く違う人物だった。
「…魏延殿か」
「何故中ニ入ラナイ?」
「遅れてきて今更入るのは如何わしいと思い…魏延殿何故出てきたので?」
「…星ヲ見ニ来タ。」
「(星かよ…)」
こんなよく分からない奴も星を見るという変な美学があるんだなと思うとどこか笑えた。
そんな自分も今まさに星を見ていたわけなのだが。
暫く黙って見ていると魏延がポツリと呟いた。
「アノ星とアノ星ヲ結ビ、アノ星ニ結ビツケル。…ガ冬ノ大三角ト言ッテイタ。」
そう言って何度も何度も夜空に三角形を描く。
「ほう」と馬超も魏延から少しだけ教わり三角を描いてみると、
どの星よりも光る星に手が止まった。
天狼星。
ふと馬岱の話が耳元で聞こえ出し、それを振り払うように頭を振ると魏延が「頭痛カ?」と言ってきた。
「多分それだ」と言うとまた夜空に顔を向けた。
魏延はまだ懲りずに三角形を描いている。
「そんなに描いて楽しいんですか?」
「ガ教エルモノ楽シイ…我…何度繰リ返シテモ飽キナイ」
仮面でわからないが、きっといま微笑んだに違いない。
馬超もふと笑うと窓から降りて自分の部屋に戻ることにし、魏延には「皆には体調不良だと言っておいてほしい」と伝えておいた。
「(劉備殿には今度謝ろう。)」
多分諸葛亮からはあの緑の閃光を喰らうに違いない。
「喰らえばきっと黒こげになるな」と苦笑を漏らして馬超は1人暗闇の中へと消えて行った。


アトガキ
なんとなく凌統達を出したかっただけです。(ぇ
更にヒロインがもらった服はどうやら過激な服のようですね。
伯約さん隅できっとぴくぴくしてます。
さて、なんだか魏延がよくわかりません。(なんだそれは
馬超も自分の国の君主のお祝いもせずに…汗
きっと打ち首よ。汗
2007.2.27(Tue)