翌朝。

紅家の門前では秀麗と静蘭がと邵可の見送りへとでてきていた。
秀麗は少し不安げな表情で、静蘭は至って普通の表情でお見送り。

ちょっとは心配ぐらいしろよ、と言いたいがそこはあえて黙っておくことにした。







、気をつけてね?」

「おう!沢山禄…を邵可さんに持って帰らせるから!」

「ありがとう!」






ガシッと効果音付きで秀麗がに抱き付く。
邵可は微笑して秀麗との頭をポンポンと優しく叩いた。







「秀麗、これからはじゃなくと呼ぶんだよ?と呼ぶのは家だけにしなさい。」

「そう…ね…」

って名前、結構気に入ってる。秀麗、心配しなくてもちゃんと禄もらって帰るからね。」

「貴女だけが頼りなの!よろしく頼むわ!」

「あはは…」






ちらりと邵可を見るとガックリとうなだれて地面にのの字を書いていた。
あとから禄が給料のようなものだと理解したのだが…秀麗の信用を失うほど禄をもらわなかったのか。

邵可のためにもこの仕事、一生懸命頑張らなきゃいけない。
…いや、死ぬ気で頑張らなきゃいけない気がする。






「じゃ、そろそろ行ってくるよ。」

「行ってらっしゃい!お父様!も頑張ってね!」

「へいへいほー」

「何それ!?」

「な、なんでもないさ!」






まぁとにかく行ってきますと、手をブンブン振りながら秀麗の家を後にした。










「今日から頼むよ、

「はい!」








そう、元気よく返事をしたはいいが…。

現実はそう甘かぁなかった。























「何だよ、これ…」








それは山だった。

ずっしりと積み重なっている本の山。





棚がちゃんとあるにも関わらず、本はバラバラと無造作に床へ落ちている。

流石のもこれには頭が痛くなってきた。

今まで邵可は何をしてきたのか…。









「邵可…様、最近になって地震きましたか?」

「いや、きてないよ?本が一つ落ちてたから私が片付けようとしたんだが…なんだか上手く行かなくてね」


「…」







なんとも素晴らしい能力。
本一つ片付けようとしてこれなんだから、これから先が思いやられる。








「私も手伝うから…」

「いえ、私のみで片付けます。邵可様は邵可様の仕事を。」

「わ、わかったよ…」








だからあっちに行っていてください、と失礼ながらピシャっといいのけるとは目の前に連なる本の山々を睨んだ。

いつか妖怪に蹴散らされた姉の部屋の掃除を一人で完璧にこなしたの力、今ここで発揮してやる。

は腕捲くりするとせっせと本を棚へと戻す作業に取り組んだ。


































昼が近づいてきた頃になると、朝廷内はがやがやと騒がしくなり色んな人が府庫前の廊下を歩いて行った。
きっとお昼時だから皆昼食をとりにいくのだろう。

まだまだ本の山は残っていたが達も作業を中断して、秀麗の作った粽を府庫の机の上で美味しくいただくことにした。










「秀麗の粽、すっごい美味い!」

「それはよかったよかった。」

「邵可様、秀麗みたいな子がいて幸せですね?」

「そうだね…私はあまり家事やら何やらできないから本当に助かるよ」







「あまり」ではなくて、「全く」の間違いだろう。
この邵可の淹れてくれた「父茶」がそう物語っている。


邵可は苦笑しながら粽を一口食べると、ちらりと府庫の入口に目をやった。
もつられて目をそちらに向けると、何やらどこかで見たような顔の男がツカツカとこちらに歩いて来ていた。






「おや?主上ではないですか」

「余も食事にまぜてほしいのだが…」






余も街で美味しそうなものを買ったからと、胡麻団子みたいなものが入った籠を机の上に置いた。
昼ご飯に団子かよ、とツッコミたかったが…この主上とか言う奴は地位の高い人っぽかったので言うのを止めた。







「もちろんですよ。さ、どうぞおかけになって。」

「すまぬ。…して邵可、この者は?」

と言って、私の仕事を手伝ってくれる者ですよ。」



「ふーん…」





主上と呼ばれた男はの爪先から頭までじーっと眺めた。

…女だとバレたら一大事だ…。
もしかしたら死刑…になったりするのだろうか?


嫌な汗をかきながら視線に耐えていたに主上が「美男だな、そなたは」と言った。





…一応、バレてない。







「余の買ってきた菓子、も食べてくれないか?」

「は、はい!ありがたく頂戴します!」

「あと…友になってくれぬか?」







しゅん、と上目使いで見てくる主上。
きっと姉、かごめが見たら飛び付いていくだろう。





「ダメか?ダメなのか?」

「そ、そのですね…」






ダメも何も…。
身分が違うのに友達になれるものか?







「今、身分を気にしたな?」

「まぁ…そうですね」

「この府庫では気にするな。それに余のことは気軽に劉輝と呼べばよい」







キラキラした瞳が目の前に迫る。
どんどんどんどん迫る。

邵可にどうしたらいいでしょう、とアイコンタクトで訴えると邵可は苦笑して迫る劉輝の肩に手を置いた。







「身分は違えど友にはなれます。秘密の友達、ということでどうでしょう?」

「秘密の……うむ、なんだか響きがいいからそうしよう!」

「(なんだよその変な理由!)」

!よいか?!」

「は、はぁ……ならよろしく…お願いします、劉、劉輝様?」

「友としてはぎこちないな…ここでは敬語をやめよう!」

「はぁ?」





これからここでは同等の立場だ!と明るく言う劉輝。
なら遠慮なく、と敬語を使わず話し出したが、のちに劉輝がこの国の王だと聞いて酷く落ち込むことになるのは少し後の話。

なんだかんだ言いつつも、初めて朝廷内で友達が出来て少し嬉しかった。
劉輝は多少どこか間抜けそうなのが欠点だが、これからなんとかなるだろう。


そんな考えも後に後悔の種となるのだった。



















さて、劉輝を迎えた府庫での食事はより楽しいものとなった。

朝廷の話や、黄奇人という変わったやつがいる話とか。
笑える話ばかりではお腹をかかえて笑った。






「その奇人ってどんな奴なのか見て見たいな」

「多分これから先ここにいるなら絶対会うことになるぞ」

「黄奇人か…自分で奇人って名前を変えたくらいだから本当に可笑しい奴なんだろうな」

、口は災いの元だから気をつけなさい?」

「は!すみません邵可様!…つい…」






邵可は苦笑してと劉輝に最後二つの粽を渡した。






「さぁ、もうじき仕事を始めますよ。」

「はい、邵可様」

「邵可、今日はここにいてよいか?」

「もちろんですよ」





偉い人がこんなとこにいていいのかわからないが、劉輝はニコリと笑っての後についてきた。





「な、なんだよ?」

「ん?見ていた。」

「見てるのもなんだから…手伝ってみる?」

「余が片付けを?」

「嫌ならいいけどさ。見てるだけじゃつまんないだろって思ってね。」






まぁ別にどっちでもいいよ、と言って本棚に向かうと劉輝は黙っての隣に立った。
ちらっと横目でみると本を二、三冊持って手に持った本をきちんと棚に並べている姿が。






「手伝ってくれるんだ?」

「あぁ、余も手伝う。だけじゃ大変そうだし…」

「ありがとう、劉輝」



「女人に重たいものは持たせたくは無いし。」



「そうか…ま、私はそこらの女の子みたいにか弱くないん…だ…けど…」



「あ、自白したな」

「……………………………」







女人=女

女=自分

自分が女=劉輝に女だとばれた








「ぎゃーーーーーーーーーーーー!!!!!馬鹿野郎!!!!!!!」

「な、何故余が怒られなければならないんだっ?」

「そんなこと知るもんか、この色男!!!!」

「しょ、邵可〜〜〜〜!!!!!」



















ついにばれた。

と言うか初日にして、しかもこの国を治める王にばれた。


によって瀕死状態に陥った劉輝を助けに入った邵可に「劉輝はこの国の王」と聞いて、
どれだけ府庫中をのたうちまわったか。

落ち着かせようと無理やり飲まされた邵可の父茶よりも、
劉輝に「別によいではないか。余は秘密にしておくぞ?」と言われたのがなによりもの救いだった。










その日しょぼくれて帰った

まさか初日にしてばれて帰ってくるとは思わなかった秀麗たちの反応はいかに。

















アトガキ


はい、初日にしてばれました…しかも王にv笑
なんとなく最後が雑になってしまった…汗
いつか修正しようかな?汗
というか…この彩雲国のキャラはどうもキャラがつかめない笑
これから頑張って研究しなくては!(しておけよ!!汗
次回、あの人とあの人を出したいな。
方向音痴とアイツ。(ぇ
では次回も頑張ろう!

2007.4.29(Sun)