「……ここ、自分の家だよね。」




星を見るために部屋からバルコニーに出るはずだったが、見たこともない洞窟に出てしまった。
もう一度扉を閉めて開けてみても、いつもの景色に戻ることはなくただ洞窟が続くだけ。

一家に魔法使いなんていない。
ましてやホグワーツ卒業生だっていない。

でもこんな非現実的なことが起こり得るのだろうか。
まさか自分が魔法使いだったのか?と思ったが、はもう18歳。
入学するには遅すぎるだろう。



「って、変なこと妄想してる場合じゃないし…それにしてもこの洞窟どこまで続いてるんだろ?」



洞窟は長く続いているようで、出口は見えない。
ただひんやりとした空気が漂っている。

は「地震や災害用に」と用意していた懐中電灯を箪笥の置くから取り出すと、
スイッチを押して洞窟内を照らした。
クマが寝ていたら嫌なので、クマがいないか確かめて安全を確認する。



「…大丈夫そう。」



そして恐る恐る足を洞窟内に踏み入れた。







「冷たっ!」



どうやら岩は水か何かで濡れているようで、足の裏にじんじんと冷たさが伝わってきた。
跣なので尚更冷たい。
小石が足の裏に当って少し痛かったが、ちょっと我慢をして辺りを見渡してみると、
岩が懐中電灯の光に反応してキラキラと光っていることに気付いた。
よく見ると岩に石英かなにかの鉱物が含まれている。

懐中電灯を全体的にあてると、まるで洞窟内が星空のようにキラキラと光った。



「ちょっとこれはみんなにも見せてあげないと!」



いいものを発見したなと急いで後ろを向いた瞬間、は一気に青ざめた。


さっきまであったはずの自分の部屋が_____ない。
代わりに大きな岩がドーンと壁を作っていた。




「う、嘘…これってやばいんじゃないの…?」



ペシペシと大きな岩を叩いてみるがビクともせず。
「岩よ部屋に通したもえ〜v」とふざけて言ってみるが岩は全く反応しなかった。

の持ち物は懐中電灯のみ。
後は、寝る前だったので着ているパジャマくらいしか手元にない。
だけどここにずっといても部屋は現れてくれそうにない。



「…節電しつつ前進あるのみ!」



この時のは帰れないかも…という不安よりも、
楽しそうかも!!という好奇心の方が大きかった。

この洞窟を抜けるまでは。























「どーこまで…どーこまで続いてるのこの洞窟は…。」




かれこれ30分は経っただろうか。
節電を心がけていたが、あまりにも真っ暗なため光がないと前に進めなかった。
よって今懐中電灯はチカチカと光だしもうすぐ消えそうな様子。

これじゃここで終わりかな…と思い出したころ、出口らしきものが見えてきた。
外の様子は夜のようで、小さな星がいくつか見えている。



「やった!!出口発見!!」



懐中電灯をフルに使い、出口まで全速力で走った。
足の裏で何回か小石を踏んだがそんなことはもうどうでもよかった。




出口まで、

5メートル…











3メートル…







1メートル…




30センチ…


5センチ…



「出口到ちゃ



        「おおおおおぉおお!!!!!!!!!!」



                       ………く?」







が出口から飛び出した瞬間大きな歓声があがった。


…わけがわからない。


しかもその歓声をあげている人々は皆鎧や槍を持った人ばかり。
大抵こういう人達は歴史の教科書の最初の方に描いてあるが、ちょっと違うようだ。

じろじろと見てくる武装集団にどう対応していいのかわからず戸惑っていたら、
目の前にいた白い羽の団扇を持った人がに歩み寄ってきた。







「力を欲した時こそ星天の洞窟より天狼の姫来る。……書のとおりでしたね。」

「?」

「よく来てくれました、天狼の姫。」







「…はい?」





武装集団は拍手喝采し、目の前の人は深々と礼をしてには何がなんだか分からなくなった。
礼の仕方が中国っぽいので試しに「ここはどこですか?」と聞くと、

「ここは蜀です」

と、すんなり言われてしまった。

蜀といえば歴史の教科書で見たことがある。
今から約1800年前の中国大陸にあった国の1つで諸葛亮や劉備などのがいた国で有名だった。



「ちょっと待って、今本当に蜀って言いました?」

「ええ。ちなみに私は蜀の軍師諸葛孔明と申します。」

「…………諸葛亮さん?」

「はい、諸葛亮です。」











「ええぇええぇえーーーーーーーーーーーーーー!!!!!?」









、18歳。
恋人いない暦18年。

洞窟を抜けるとそこは蜀の国でした。
















アトガキ


天狼姫連載開始でございます。
ヒロインは三国無双の世界に入ってしまったのですが、
彼女は三国無双をしりません。
歴史に忠実ではないのでフリーモード系ですね。
まだまだ未熟ですが精一杯頑張ります!
2007.1.20(Sat)